「リアルなピアノの音でDTMをしたい」と思ったとき、最初にぶつかる壁がピアノ音源選びです。種類が多すぎて何を選べばいいかわからない、という初心者の方はとても多いです。
この記事では、ピアノ音源の定番として長年愛されてきたSynthogy「Ivory 3」を中心に、他のピアノ音源と比較しながら、初心者が知っておくべき選び方・使い方をわかりやすく解説します。「いつか本物のピアノのような音で曲を作りたい」という方に、ぜひ読んでほしい内容です。
ピアノ音源って何?DTM初心者のための基礎知識
ピアノ音源(ソフトウェア音源)とは
ピアノ音源とは、パソコン上で本物のピアノの音を鳴らすためのソフトウェアのことです。DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション=音楽制作ソフト)に読み込んで使うプラグインの一種で、MIDIキーボードで弾いたりDAW上に音符を打ち込むことで、まるで本物のグランドピアノのような音が出ます。
DTM(デスクトップミュージック=パソコンを使った音楽制作)では、実際のグランドピアノを用意することはほぼ不可能なので、こうしたソフトウェア音源が欠かせません。
サンプル音源とモデリング音源の違い
ピアノ音源には大きく2種類あります。
- サンプル音源:本物のピアノを実際に録音(サンプリング)した音を使う。リアルな音質が特徴。Ivory 3はこのタイプ。
- モデリング音源:物理計算でピアノの振動を再現する。データ容量が小さい傾向がある。
サンプル音源は本物のピアノを録音しているため、データ量が大きくなりがちです。Ivory 3のフルインストールには約42GBのストレージが必要です。インストール前にパソコンの空き容量を確認しましょう。
Ivory 3とは?Synthogyが誇る定番ピアノ音源の最新世代
Synthogy「Ivory」シリーズの歴史
Ivory(アイボリー)は、アメリカのSynthogy社が開発するピアノ音源シリーズです。初代リリースから20年以上の歴史を持ち、プロのレコーディングスタジオから自宅DTMまで幅広く使われてきた業界標準クラスの定番音源です。
Ivory IIが長年使われ続けた後、2023年にIvory 3(Ivory 3 German D)がリリースされ、エンジンの根本から刷新されました。
Ivory 3の最大の特徴:RGBエンジン
Ivory 3の心臓部となるのが「RGBエンジン(Real-time Gradient Blending)」です。従来のサンプル音源は「ある音量では◯番のサンプルを使う」という段階的な切り替えでしたが、RGBエンジンはリアルタイムでベロシティ(鍵盤を押す強さ)に連続的に対応します。
これにより、弱く弾いたときと強く弾いたときの音のつながりが非常に滑らかになり、まるで本物のピアノを弾いているような表現が可能になりました。さらにMIDI 2.0のMIDI Velocity Extension(MIDIベロシティ拡張)にも対応しており、公式仕様によると65,536段階のベロシティに対応しているとされています。
Ivory 3 German D:ハンブルク製スタインウェイDを新録
Ivory 3 German Dは、世界最高峰のコンサートグランドピアノのひとつであるハンブルク製スタインウェイDコンサートグランドピアノを新規に録音した製品です。
録音は「Le Domaine Forget de Charlesvoix Concert Hall」という音響的に優れたコンサートホールで行われ、コンサートテクニシャンのMichel Pedneauが手入れを施した状態でレコーディング。力強い低音と丸く歌うような高音が特徴とされています。
マルチマイキングと「Desk」セクション
Ivory 3では複数のマイクポジションが収録されています。
- クローズマイク:ピアノに近い、輪郭がはっきりした音
- ミッド/サイド(M/Sマイク):自然な広がりのあるステレオ感
- アンビエントマイク:ホールの空気感・残響を表現
さらに新機能「Desk(デスク)セクション」では、各マイクの音量バランスを個別に調整でき、トリム・ゲイン・3バンドEQ・コンプレッサー・アンビエンス・コーラス/ディレイなどのエフェクトも内蔵。DAWのエフェクトを使わずにIvory 3だけで音作りが完結できます。
RGBエンジンによる連続的なベロシティ対応で演奏表現が格段にリアル
3種類のマイクポジションをブレンドしてホールの空気感まで再現
Deskセクションで音源単体でもEQ・コンプなどの音作りが可能
Ivory IIからのアップグレードパスあり(ディスカウント価格で購入可能)
フルインストールに約42GBのストレージが必要(ストレージ容量の確認が必須)
定価は4万円前後と、初心者には少し高い価格帯
パラメータが多く、最初は使いこなすまでに時間がかかる
Ivoryシリーズ・競合製品の比較表
各製品の特徴を一覧でまとめました。参考情報をもとに作成しています。価格は参考情報記載の定価(税込)ですが、セール時や為替の変動により異なる場合があります。最新の価格は各公式サイトまたは販売店でご確認ください。
| 製品名 | 開発元 | 収録ピアノモデル | ベロシティ対応 | 容量 | 参考定価(税込) | 初心者向け度 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Ivory 3 German D | Synthogy | ハンブルク製スタインウェイD | 連続(RGBエンジン) | 約42GB | ¥40,700 | ★★★☆☆ |
| Ivory 3 American Concert D | Synthogy | ニューヨーク製スタインウェイD | 連続(RGBエンジン) | 約38GB | ¥38,500 | ★★★☆☆ |
| Ivory II Grand Pianos | Synthogy | ベーゼンドルファー/スタインウェイ/ヤマハ | 最大18段階 | 約78GB | ¥56,000 | ★★☆☆☆ |
| Ivory II Studio Grands | Synthogy | スタインウェイ/ベーゼンドルファー | 最大24段階 | 約112GB | ¥42,900 | ★★☆☆☆ |
| Ivory II Italian Grand | Synthogy | ファツィオーリ | 最大18段階 | 約28GB | ¥27,500 | ★★★☆☆ |
| Ivory II American Concert D | Synthogy | ニューヨーク製スタインウェイD | 最大20段階 | 約50GB | ¥28,050 | ★★★☆☆ |
「ベロシティ」とは鍵盤を弾く強さのことです。段階数が多いほど、または連続対応しているほど、弱く弾いたときと強く弾いたときの音の変化がなめらかになります。Ivory 3のRGBエンジンはこれを連続的に処理するため、演奏の表現力が特に優れています。
Ivory 3の使い方:初心者が最初に覚えるべき操作
ピアノ音色を読み込む(プリセット選択)
Ivory 3を立ち上げると最初は音が出ません。まず「Program Preset(プログラムプリセット)」からピアノのプリセットを選択します。プリセット一覧が表示されるので、好きなものを選んでOKをクリック(またはダブルクリック)するとピアノのサンプルが読み込まれます。
各ピアノモデルの一番上に表示されているプリセットが「標準プリセット」です。初心者はまず標準プリセットを選んで音を確認するのがおすすめです。
Programタブで基本的な音質を調整する
プリセット読み込み後、Programタブで以下の7つのパラメータを調整できます。
| パラメータ名 | 役割 |
|---|---|
| Shimmer(シマー) | 音の揺らぎ。右に回すほど揺れが増える |
| Release(リリース) | 鍵盤を離した後の音の減衰時間 |
| Key Noise(キーノイズ) | 鍵盤を押したときの機械的なノイズ量 |
| Timbre(ティンバー) | 音色・音の質感 |
| Dynamic Range(ダイナミックレンジ) | 小音量〜大音量の幅。右に回すと幅が狭くなる |
| Trim(トリム) | 全体の音量調整 |
| Stereo Width(ステレオ幅) | 左右への広がり。左に振り切るとモノラル |
初心者は最初プリセットのまま使い、慣れてきたら少しずつパラメータを動かして好みの音に近づけていきましょう。
アコースティックな空気感を加えるサブパラメータ
本物のピアノらしさを出すには、以下のパラメータも重要です。
- Sustain Resonance(サステインレゾナンス):ペダルを踏んだときに弦が共鳴する音。右に回すと増える
- Sympathetic Resonance(シンパセティックレゾナンス):弦同士が影響し合う相互共鳴。グランドピアノ特有の響き
- Pedal Noise(ペダルノイズ):ペダルを踏む/離す際のメカニカルノイズ
- Release Samples(リリースサンプル):鍵盤を離したときのわずかな音(倍音)
これらを少し加えるだけで、一気にリアルなグランドピアノらしさが増します。初心者のうちはSustain ResonanceとPedal Noiseを少し上げる程度がおすすめです。
マイクバランスで音のキャラクターを変える
Ivory 3のマイクセクションでは、クローズ・M/S・アンビエントの各マイクの音量をブレンドできます。
- クローズ多め:輪郭がくっきりしたポップス・ロック向きのサウンド
- アンビエント多め:空気感たっぷりのクラシック・映画音楽向きのサウンド
自分の作る音楽ジャンルに合わせてバランスを調整してみてください。
Ivory 3はデータ量が多いため、音源ファイルをSSD(内蔵・外付け問わず)にインストールすることが推奨されています。HDDにインストールすると読み込みが遅くなったり、パフォーマンスが低下することがあります。
初心者はどれを選ぶべき?用途別おすすめガイド
まず試してみたい・予算を抑えたい初心者に
完全な無料体験版は公開されていませんが、まずはIvory IIシリーズの中でも比較的価格が手ごろなIvory II Italian Grand(参考定価¥27,500)やIvory II American Concert D(参考定価¥28,050)から入るのも一つの選択肢です。
本格的にDTMを続けるなら最初からIvory 3
長く使い続けることを見越すなら、エンジンが最新のIvory 3を最初から選ぶのが合理的です。RGBエンジンによる表現力の高さは、上達するにつれてその価値をより実感できます。
- クラシック・ジャズ・映画音楽志向→ Ivory 3 German D(ハンブルク製スタインウェイの温かみある響き)
- ポップス・J-POP志向→ Ivory 3 American Concert D(ニューヨーク製スタインウェイの明るく力強い音)
Ivory IIユーザーはアップグレードを検討
すでにIvory IIをお持ちの方は、ディスカウント価格でIvory 3へアップグレードできるパスが用意されています。詳細はSynthogyの公式サイトまたは国内販売店でご確認ください。
Ivory 3をもっと使いこなすためのヒント
リリースカットピアノも作れる
昨今のJ-POPやボカロ曲で定番になっている「リリースカットピアノ」(鍵盤を離した瞬間に音がぷつっと切れるエフェクト的なサウンド)も、Ivory 3のリリース音のオン/オフとリリースタイム調整で実現可能です。
ストリングスとのレイヤー機能
Ivory 3にはシンセサイザーとのレイヤー機能があり、「LA Scoring Strings」シリーズで知られるAudiobro社によるアンサンブルストリングスの音色も収録されています。ピアノとストリングスを重ねた、映画的なサウンドも手軽に作れます。
コーラスエフェクトで80年代サウンドに
Deskセクション内のコーラスエフェクトを有効にすると、1980年代のエレクトリックピアノを彷彿とさせるサウンドになります。ジャンルの幅を広げたいときに試してみてください。
Ivory 3はパラメータが非常に多く、最初は圧倒されるかもしれません。しかし基本的には「プリセットを選んで、マイクバランスを少し調整するだけ」で十分な品質の音が出ます。最初は難しい設定はせず、プリセットをそのまま使うことをおすすめします。
まとめ:Ivory 3は「一生使えるピアノ音源」の最有力候補
- Ivory 3はSynthogy社のピアノ音源の最新世代で、RGBエンジンによる連続ベロシティ対応が最大の特徴
- フルインストールには約42GBのストレージが必要。SSDへのインストールを推奨
- 複数のマイクポジション(クローズ・M/S・アンビエント)とDeskセクションで柔軟な音作りが可能
- 初心者はまずプリセットをそのまま使い、慣れたらパラメータを調整していくのがコツ
- クラシック・映画音楽志向はGerman D、ポップス志向はAmerican Concert Dがおすすめ
- Ivory IIユーザーはアップグレードパスあり(詳細は公式サイトへ)
- 価格は定価で¥38,500〜¥40,700前後(最新価格は公式サイト・販売店でご確認を)
Ivory 3は「初心者には少し贅沢かも」と思われるかもしれませんが、一度購入すればクラシックからポップス、映画音楽まであらゆるジャンルで長く使える音源です。DTMを本格的に続けるつもりなら、最初から良い音源を選ぶことは後悔しない投資になります。
まずは公式サイトのデモ音源を聴いてみて、その音質の高さを実際に確認してみてください。あなたのDTMライフが、最高のピアノサウンドとともに始まることを願っています!
Ivory 3 German D / American Concert D の購入・詳細はSynthogy公式サイトまたは国内販売代理店でご確認ください。
Ivory IIシリーズの物理パッケージ(旧製品)はAmazonで取り扱いがある場合もあります:
Ivory II Studio Grands Amazonで在庫・価格をチェック
参考・出典
本記事は、上記の公開情報をもとに作成しています。価格・仕様は変動するため、購入前に各公式サイト・販売店で最新情報をご確認ください。

コメント